about Biodynamicsバイオダイナミクスについて

バイオダイナミクスオステオパシーの歴史

バイオダイナミクスオステオパシーは、19世紀にアメリカの医師スティル(Dr.Andrew T.Still)によって創始されたオステオパシーがベースになっています。1)身体全体をひとつのユニットとして考える 2)身体の機能と構造は一体のものであると考える 3)身体は自らを防御し修復しようとする能力(自然治癒力)を備えているといった独自の自然哲学に基づいており、当国で1896年に正式に医療資格として法的に認められました。

(photo by Thomas L.Shaver D.O.)

Drスティルは、当時西洋医学の成功した医師でしたが、流行病で3人の息子を亡くしてから、医学は万能ではなく、時には有害にもなりえると考えるようになり、その後、解剖学を調べなおし実際に人間の身体を詳細に観察する中で、人間の構造(骨、筋、筋膜など)は、健康や疾患に大きく関わっており、それらを適切に修正することで、自己治癒力を高めることができることを発見しました。

オステオパシーはその後、正確な解剖と生理学に基づいた手技によって、内臓機能から精神疾患に至るまで人全体のあらゆる領域に効果をもたらす治療法として発展し、その後継者によって、頭蓋領域を扱うクレニアルオステオパシー、筋膜リリース、ジョーンズテクニック(ストレイン・カウンターストレイン)など、有機的な生きた存在として人体を扱い、回復をもたらす様々な手法が生み出されていきます。
その根底にある『健全をさがしなさい。病気は誰にでもみつけられます。』というスティルの言葉と哲学は現在まで引き継がれ、疾患ではなく、身体全体の治癒力を最も重視するホリスティックな医療体系として、現在はアメリカを中心に世界中に設立された医科大学で多くの人に学ばれています。

バイオダイナミクスオステオパシーは、それを継承する、頭蓋領域の研究(クレニアルフィールド)で大きな功績を残したW.サザーランドD.O.が、治療の領域で見出した自律神経系に集約される動きと、ヒトの固体発生について、画期的な見解を示した胎生学者のDr.ブレッヒシュミットが発生と成長の領域で発見した自然の法則に、同じ生命の源泉を見出したジェームス・ジェラスD.O.がそれを実践の中で実現できるように体系化した、穏やかなハンズオンのシステムです。

メカニカルを重視するオステオパシーから、さらに身体への傾聴を深めることにより、自然との協調、内なるすべてがバランスされ統合される治癒のプロセスなどオステオパシーの根源にあるものがより繊細に表現されるようになり、治療の領域をさらに広げていきました。近年ではとくに子供の治療や精神領域などでも注目を集めています。

バイオダイナミクスオステオパシーの概要

細胞分裂が始まる瞬間、受精卵は一瞬消えたように見えます。
けれども、これは消えたのではなくて、受精卵が分裂するためのバランスがすべて整い、動的な静止が起きたのです。ちょうどやじろべえの左右のバランスが整うと動きが止まって見えるように。 何かが生まれる時、治癒の力が発動する時、必ず“消えた”ように感じられる深い静けさ(stillness)が訪れます。健全に向かおうとする動きが、一つの支点で調和するのです。もっとも大切にしているのは、この全体性の中でのバランスです。バイオダイナミクスオステオパシーは、それをサポートするための深い傾聴に基づく技術です。
誕生はこのもっともダイナミックな生命のシステムの現れです。

【 発生学との関連 】

エーリッヒ・ブレッヒシュミット医学博士は非常に高く評価された稀有な先進的発達学における治療のフィールドに興味深い貢献をしました。
ブレッヒシュミット博士は胎児が成長し、姿を変えて行く時、発達する胎児の細胞を注意深く観察しました。 最終的に成人の生命体構造になるまで細胞が、次々に変化し特徴を変えて行く時、細胞が次々と位置を変えていくのを見て取りました。
彼はこれらのアクティビティの力学的フィールドが生命の細胞の基盤の幾何学そのものから生じ、顕著な動きのパターンを生み出していることを発見しました。この発達する胎児の生成的な物理的エネルギーの力、動きのパターンが、治療のフィールドでウイリアム・サザーランドD.O.が観察していた再生成的な動きのパターンと基本的に一致したのです。

※参考文献整 『イン・ザ・プロセス・オブ・オステオパシック・トリートメント・プロセス』ウイリアム・サザーランドD.O.著

正中線(ミッドライン)

受胎後14日目に 胎児には、“胎児口盤”と呼ばれる平たい組織が形成され、19日目に胎児口盤のセンターに直接一本の線が形成されます。このラインは“原初の線“と名付けられ”頭部と尾部に向かって伸びて行きます。

このラインは1つの神経系のチューブへと成長し、私達の中枢神経系のシステムとなります。それが頭部末端に向かって伸展し脳を形成します。 神経のチューブの深部には“脊索”というもう1つの構造があり、この脊索はあらゆる発生学的発達のための、脊髄分節の形成体の働きをします。

成人にはかつて脊索であった痕跡だけが残っているだけですが、 1本の機能的正中線は生きている間中、私達の生理機能をガイドし、編成するためにその働きを停めることはありません。 バイオダイナミクスでは、肺呼吸だけでなく、構造は失われても機能として働き続ける自然と同調した呼吸からガイドをうけ、神経系を主軸とした健全に導かれる動きをサポートしていきます。

五感から遠くへ 意識の及ばない内受容器の働きとの相互関係

私たちの生理機能をガイドするダイナミックな動き、それはホメオスタシスを維持し、常に内と外を行き来する物質、情報をバランスする自立した動きです。情報には感情や思考も含まれ、それは私たちが認識し、行動するよりも早く心身に変化を及ぼします。そこに重要な働きをもつものの1つが内受容器の働きです。その求心性の神経経路は外受容器(いわゆる五感)とも身体の位置情報などを伝達する固有受容器とも異なり、辺縁系と深く関わる島皮質に収束され、島皮質の機能である情動と身体情報の統合という役割に多くの影響を及ぼします。

それらは、例えば治そうとする意思や意図のような些細な動きに対しても敏感に反応し、触れることがかえって、本来の身体が行おうとする動きを制御することになりかねません。

バイオダイナミクスは、独特の“透明な手”によって、この筋膜に多く位置する内受容器の反応・センサーの、そのわずかな反応を感知して、物質と情報の求心性の神経伝達を正常に保つサポートをします。それは意識的に行われるとうまくいかないケースが多く、私たちはクライアントのシステムが許す存在としてそこにいる、触れるということに一番トレーニングを要します。クライアントのシステムと私たち施述者を含む場で何が起きているか。それに従うことをもっとも大切にしています。

シャーマニックな視点とガイダンス

先住民族の人々は、疾病や苦悩が、自然界のリズムと人間のダイナミックな関係性から人間の活動が遊離してしまう時に起こることを知っていました。
文明人である私たちは、この関係性の深遠な感覚を失ってしまっています。シャーマニックなガイダンスが不足しているのです。

私たちが生まれる前から従っているガイダンス、それによって作られた私たちの中心は、皮膚の境界線で制限されることなく、地平線まで広がり、宇宙のリズムと同調しています。

バイオダイナミクスで重視しているのは、この内なる宇宙と自然のシンクロなのです。

自然界に生まれ、生きている実体である私達は、根本的な生命活動においてこれら自然のリズムを基準としています。1個の細胞から私達を成人へまで成長させる力、また傷を癒し、私達の健康を復活させ、制限なく機能を発揮させる力、それは自然界のリズムによって育まれています。バイオダイナミクスはシャーマニックなガイダンスに耳を傾けることで、健康を保つサポートしていきます。